: 肖像財産権(パブリシティ権)について

 

肖像には本人に無断で撮影をされない、撮影された肖像を無断で使用されないという権利が判例上認められています。これを人格権としての肖像権といいます。さらに著名人等の肖像には、顧客吸引力、言い換えると経済的価値(商業的な利用価値)があることから、これを法的に保護するため、無断で商業利用に使用されないという権利も判例上認められています。これを財産権としての肖像権(肖像財産権=パブリシティ権)といいます。、以下では人格権としての肖像権を「肖像権」と、財産権としての肖像権を「肖像財産権(パブリシティ権)」と記載とすることにします。

 

モデルについても、肖像を商品の宣伝や販売促進に使用させ、その対価を所得することが経済活動として成り立っているのは、そこに顧客吸引力=経済的価値(商業的な利用価値)がある他になりません。したがって、モデルの肖像についても人格権としての肖像権に加えて、肖像財産権(パブリシティ権)が成り立ちます。

 

なお肖像というと顔だけを考えがちですが、手・足・髪・後ろ姿等のパーツについても肖像財産権(パブリシティ権)が否定される理由はありません。

 

以上の肖像権・肖像財産権(パブリシティ権)に加えて、モデルの出演内容によっては著作権法上の実演家の権利(著作権法第4章第2節)が成立する場合がありますので、この点も注意が必要です。

 

Ⅱ:権利の帰属

 

Ⅰに記載したとおりモデルの肖像については肖像権・肖像財産権(パブリシティ権)が成り立ちます。モデルエージェンシーと専属契約しているモデルの肖像財産権(パビリシティ権)については独占的・排他的にモデルエージェンシーに帰属しますので、肖像を使用する目的が何にであっても必ず事前にモデルエージェンシーの許諾を得なければなりません。許諾を得ずに使用した場合、許諾の範囲を超えて使用した場合は肖像財産権(パブリシティ権)の侵害となり契約上のペナルティが科されますので注意が必要です。

 

Ⅲ:契約(契約当事者)について

     モデルエージェンシーと専属契約しているモデルの肖像使用に際しては、肖像を使用する主体となる使用者(広告主・広告会社・制作会社等著作権者)が契約当事者となり、モデルエージェンシーとなりモデルエージェンシーとの間で契約してください。

     モデルエージェンシーが確認していない契約書・覚書等をモデル本人とと直接取り交わした場合、内容によってはその契約書・覚書が無効となる場合もあります。

     肖像はモデルエージェンシーから許諾を得た範囲内でのみ使用することができます。トラブルを回避するためにも、契約書や出演内容を網羅した発注(受注)確認書を作成し、許諾の範囲について書面で確認してください。

     モデルエージェンシーから得た許諾の範囲を超えて肖像を使用してしまった場合、肖像を使用する主体となる広告主・広告会社・制作会社がその責任を免れることはできません。契約までもキャスティング会社に任せてしまうのではなく広告主・広告会社・制作会社が契約当事者となり、許諾の範囲を直接確認したうえで契約当事者としての責任を持って肖像を使用してください。

 

出演契約の留意点

モデルエージェンシーは所属モデルと「マネジメント専属契約」を締結しているため、所属モデルの代理人として出演契約を締結する正式な権限を有します。

従って出演契約を結ぶ相手先は出演する「成果物」の権利者であると見なしています。

諸般の事情により「キャスティング会社」と出演契約を締結する場合は「広告主」や「広告代理店」「制作会社」と『キャスティング業務委託契約』がある事を前提としての契約となります。

また、出演条件に関しては出演依頼する側から様々な条件を課せられますが、対価としての出演料の支払いに関する条項が不明確なものが多く見られます。

出演契約書に「広告主」や「広告会社」、「制作会社」及び「キャスティング会社」が同等の発注者責任を負う事を明記してください。

「成果物」の制作完了後のみならず、その「成果物」が使用されている期間において契約は効力を有します。

契約以外での使用への対応や支払いへの不履行などの発注者責任は「成果物」の権利者にあります。

その為、出演料を支払期日までにご入金いただけない場合は、その契約が無効となり「広告差し止め」申し立てを行う場合もあります。

出演料のお支払いが期日までに確認できなかった場合は、「キャスティング会社」、「制作会社」、「広告代理店」、「広告主」という順番で出演(肖像使用)の許諾確認と出演料のご請求をさせていただきます。

広告主、広告代理店、制作会社各位におかれては「キャスティング業務委託会社」の選定は委託した側の責任が重大であることをご理解ください。 

Ⅳ:競合について

 

第三者への出演を制限することはモデルの活動に対する大きな制約となりますので、以下のルールに従い、モデルエージェンシーの許諾を得てください。

 

     企業競合をかけ独占的に肖像を使用する場合は専属契約料、商品競合をかけ制限する場合は拘束料が別途発生します。

 

     「競合なし」の場合は、他の出演に関しては制限がないため、出演情報の提供には応じかねますのでご了承ください。出演情報の確認が必要な場合、「競合あり」の条件に変更の上、別途拘束料をお支払いください。